頭部外傷診療
近年頭部外傷の診療は大きな変化を見せています。
子どもを含む若年者については軽症頭部外傷の危険性が徐々に明らかになり、これに伴い治療方針もより二回目の頭部外傷を防ぐ方向に進んでいます。
高齢者については特に「血液をさらさらにする薬」を服用している方について、軽度の頭部外傷でもCTを撮影し、頭蓋内出血について精査を行うことの重要性が報告されるようになりました。
当院では備付のCTを必要に応じて用いながら、精度の高い頭部外傷診療を目指しています。
子どもの頭部打撲
乳幼児期においては落下や転倒、遊んでいる中での接触などにより頭部を打撲することが多いです。
頭部外傷の評価は出血や骨の描出に優れるCTを用いるのが通常ですが、乳幼児などの細胞分裂が盛んな若年者については被爆の影響を考慮し、意識障害を認めるなどの比較的重症と思われる場合以外での撮影は原則的に行いません。
通常はご両親の目から見ていつもと変化があるかどうかを大きな基準としていますが、もちろんご判断に自信が無ければいつでもご相談下さい。
また、頭部を打撲した後の競技や体育の授業への復帰方法などについてもアドバイス致します。
私自身子を持つ親として、子どもが頭部を打撲したときのご両親の不安はよく理解できますので、お気軽にご受診下さい。
※当院では説明する際に日本臨床スポーツ医学科により発行された「頭部外傷10か条の提言(リンク)」を用いることが多いです。
診察室でもお見せ致しますが、タイトルを忘れたなどの際は上のリンクをご参照下さい。
高齢者の頭部打撲
高齢者の頭部外傷は頭蓋内出血の危険性もある事から、特に「血液をさらさらにする薬」を服用中の方についてはCTによる画像評価が推奨されるようになってきています。
また、習慣的な飲酒をしている方は脳が萎縮することで、頭部打撲から1ヶ月程度を目安に慢性硬膜下血腫という病態となって麻痺や構音障害(ろれつが回らない)という症状を呈するリスクが通常より高くなりますので、慎重な経過観察が望まれます。
高齢者が転倒により頭部外傷を負うということは、運動能力や身体能力が衰えた結果、家をはじめとした生活環境がそろそろ危険な物になりつつあるというサインである事が非常に多いです。
つまり、外傷のみに注目してその外傷を生じた環境に目を向けなければ、外傷を何度も繰り返す結果となることが多いのです。
頭部外傷をきっかけとして適切な介護方針の策定を開始することで、二回目の頭部外傷を防ぐことができる可能性もあり、当院ではご希望も伺いながら介護保険の申請などのご案内を行うようにしています。
これからの脳神経外科には高齢化社会に寄り添うよう、そうした気配りも求められていると考えています。
頭部の切り傷など
傷の縫合をはじめとした処置は外科医としての専門領域ではありますが、その中でも頭部の切り傷などについては脳神経外科ならではの技術が求められることが多い部位です。
毛髪があり創部が見えにくくなることに加え、血流の多い頭皮は出血しやすく、頭部の縫合に慣れた脳神経外科医でなければ適切な処置が難しいことが多いです。
当院では脳神経外科医ならではの技術で、毛根を保護したり、髪が伸びれば目立たなくなるような切開や縫合をしたり、また血が止まりにくい傷に対して速やかな止血や傷が再度開きにくい縫合を行ったりと、専門的な対処を行います。