脳神経外科の専門性の一つに脳卒中への対応があります。
脳卒中とは「脳出血」、「脳梗塞」、「くも膜下出血」の3疾患に対する総称ですが、いずれの疾患に対しても、薬剤を用いた治療はもちろんのこと、手術を含めた治療を検討できることが脳神経外科の強みです。

脳神経外科というと手術のイメージがありますが、手術を行うかどうかを含めて判断する科でもありますので、手術に至らない患者様も当然に対象となってくるのです。

しかし、残念ながら現代医学では脳卒中となった患者様を発症前の状態に完全に治すということが難しい場合が多く、必然的に予防の重要性が非常に増しています。

高血圧、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、高尿酸血症などの生活習慣病に対するコントロールも重要ですし、未破裂脳動脈瘤などの一部遺伝が絡むような疾患についても精査や治療、あるいはきちんと経過を観察することが大切です。
こうした疾患については、患者様ご自身が自らの病気について知識を持ち、主体的に治療戦略を医師と相談しながら決めていくのが理想的な形です。

当院ではこの観点から、患者様に対して専門的見地からの説明をかなり詳しく行いますが、「専門的」とは「理解が難しい」ということではありません。
可能な限り患者様ご本人やご家族の理解が得られるような分かりやすい説明を心がけておりますので、脳卒中についてご不安をお持ちであれば、一度ご相談ください。

 

脳梗塞

 

一般の方でもよく言われる「血管が詰まる」ことによりその血管が血液を届けていた範囲の脳細胞が機能しなくなり、片方の手足の麻痺や構音障害(ろれつが回らない)、失語(言葉が出ない・理解できない)、場合によっては意識障害を呈する疾患です。

最近では発症から間もなければ血栓を溶解したり、血管内治療によって血栓を回収したりする治療が標準となっています。
最初の段階では後に解説する脳出血と区別がつかないことも多く、まずCTを撮影して脳出血を除外する施設が多いです。

当院ではCTがありますので、脳出血を除外し、脳梗塞の急性期であると判断した段階で脳保護薬を投与しながら近隣の病院への転院を調整する方針です。
血栓を溶解したり血栓を回収するまでの時間を可能な限り短縮できるよう、末端ではありますが地域医療の担い手として努力していきます。

また、内頚動脈狭窄症や生活習慣病、「血液をサラサラにする薬」の調整などについても、脳神経外科の立場から解説や治療の継続が可能です。
お困りの患者様や周辺医療機関の皆様など、いつでもご相談ください。

 

脳出血

 

高血圧や飲酒などの生活習慣を背景として、脳の血管が破れ、脳内に出血してしまう疾患です。
これにより脳梗塞と似た症状が出てきます。
脳内の出血はCTで簡単に診断ができますので、当院では疑わしい患者様については直ちにCTを撮影して診断を行います。
脳出血は最初の段階で血圧を下げることが大切といわれています。
このことから、当院では注射によりすぐに効果を発揮する降圧薬を常備し、降圧しながら専門的治療が可能な病院への転院を調整する方針としています。

脳出血に対して入院治療を行い、退院した後の経過観察や薬剤の調製、生活習慣の指導は、再発予防の観点から極めて重要です。
脳卒中は完全に症状が消失せず後遺症に苦しむことが多く、一次予防(病気にかからないようにすること)、二次予防(悪化しないようにすること)、三次予防(再発しないようにすること)がこの順番で大切です。

当院では必要に応じて最新のガイドラインなどを参照しながら、ご自身の病気に対する知識をつけていただき、納得した上での選択より一歩進んだ、理解した上での治療選択を目指していきます。

 

くも膜下出血

 

脳梗塞や脳出血とは違い、多くの場合で脳の表面を這う太い血管にできた動脈瘤が破裂して、脳の表面を血が覆ってしまう疾患です。
脳の表面を血が覆うと、この血が脳を覆う膜を刺激するので、破裂した瞬間に耐え難い頭痛を訴えることが特徴です。
逆に、脳卒中で頭痛が主たる症状となるのは、このくも膜下出血のみです。

くも膜下出血は現代においても初回出血で1/3程度が亡くなる、致死率の高い疾患です。
また、一度は止血したとしても再出血をきたすと、この死亡率が50%まで上昇します。
従って発症時には降圧、除痛、必要に応じた鎮静を行い再破裂を防ぎ、直ちに再出血予防の治療が可能である病院へ搬送することが重要となってきます。

くも膜下出血の頭痛は激烈であることが多く歩行は不可能となりがちであり、診療所である当院が初期治療にかかわることは少ないかもしれません。
しかしながら、助かっても後遺症があることも多い疾患であり、また、高血圧の管理なども重要となってきますので、退院後は専門家のもとで治療を継続することが望ましいです。

また、致死率が高い疾患ですので、脳出血以上に一次予防(病気にかからないようにすること)が大切になってきます。
当院ではくも膜下出血の原因になり得るような未破裂脳動脈瘤が脳ドックなどで発見された場合、その治療戦略について解説し、治療可能な病院を紹介するなどして一次予防に努めます。

 

脳卒中の経過観察ではCTとともにMRIが非常に重要となってきます。
当院にMRIはありませんが、近隣病院とMRIについてかなり専門的な撮像をしていただけるように提携しております。
お困りやご不安をお持ちの際には、お気軽にご相談ください。