頭痛診療
脳神経外科の外来を行う上で、頭痛は患者様のかなりの割合を占める疾患です。
もちろん頭痛から生命の危機を感じる事もあるでしょうし、慢性化した頭痛はそれだけで生活の質を下げ、労働や勉強の効率を落とし、せっかくの休日を辛いものに変えてしまいます。
脳神経外科では、こうした頭痛に対して外科医の目から見たアプローチで緩和や根治を目指しています。
1. 頭痛診療のスタートライン
何はともあれ、場合によっては命の危険があるような疾患を含む、様々な疾患による頭痛(二次性頭痛と呼びます)を除外することから始まります。
当院にはCTがありますので、これによりくも膜下出血や脳出血、ある程度の大きさの脳腫瘍といった危険な疾患はすぐに除外できます。
頭痛で脳神経外科を受診することは、頭の中を調べる良いきっかけとなります。
未破裂脳動脈瘤などを筆頭として頭痛の精査を通じて発見される疾患は数多く、例え頭痛自体の診断には至らなくても、この時点での精査が命を救ったと言えることも、たくさん経験してきました。
このことから、例え重大な病気の可能性が低かったとしても、一度は調べておいた方が良いというのが当院の方針です。
2. 頭痛診断を進める
CTで異常がなかった場合、MRIまで行う事をお勧めします。
CTは出血や骨の情報に優れますが、脳自体については大まかな形の評価に留まり、血管の精査は困難です。
一方で、頭痛の原因が血管や脳炎などの脳自体の疾患である事もあり、MRIではこうした構造物が綺麗に描出されるため、診断に有用です。
また、先にも書きましたが、頭痛の原因精査でたまたま未破裂脳動脈瘤をはじめとした別の疾患が見つかるということは、脳神経外科の外来でしばしば経験することです。
当院にMRIはありませんが、近隣の病院とMRIについて提携しております。
患者様によってはMRIとは単一の検査であるようにおっしゃる方もいらっしゃいますが、
実はMRIには数多くの撮像方法があり、適切な方法を取らなければ疾患を見落としてしまう可能性が高まります。
当院とMRIについて提携して頂いている病院様については、当院からかなり専門的な撮像方法を指定させていただいております。
また、これに加えて疑われる疾患に応じた撮像方法を個別に指定することで、可能な限り診断精度を高めるよう努力しています。
こうして撮影されたデータを当院にお渡しいただくことで、脳神経外科の専門家の目からの診断を行うことが可能です。
一言で「MRI検査」と言っても、そのオーダーには専門的な知識が必要ですので、ご留意ください。
3. 更に頭痛診断を進める
実は頭痛のうち画像上の異常を認める二次性頭痛は1割程度で、大多数の9割程度が画像上の異常を持たない頭痛(一次性頭痛といいます)であると言われます。
従って、CTやMRIを行ってもそのほとんどは原因が指摘できないということになります。
患者様によっては、画像上の異常が無いことから落胆される方がいらっしゃいますが、これは生命に影響のあるほどの危険な頭痛が除外されたという証ですので、ご安心頂くのが良いかと思います。
それでは、9割を占めるという一次性頭痛とはどのような頭痛でしょうか。
・筋緊張性頭痛
・片頭痛 (×偏頭痛)
・群発頭痛
・薬物濫用性頭痛
などが有名なところですが、恐らくどこかで見たことのある病名なのではないでしょうか。
最近ではテレワークの増加や運動機会の減少によって、悪い姿勢を継続する上に首や肩の運動が減り、特に大後頭神経領域の筋緊張性頭痛を発症する方がかなり増えています。
片頭痛については新しい薬剤(抗CGRP製剤)も登場しており治療の幅が広がっていますし、群発頭痛においても原因に迫るような研究結果が報告され始めているなど、頭痛の診断や治療を取り巻く環境はめまぐるしく変化しています。
当院としては、そうした逐一変わる診断や治療事情についてもご説明しながら、患者様本人にとって最善となる治療法を共に模索するように心がけています。